副業をする際、アルバイトやパートとして雇用されて働くか、スキルや経験を生かして個人事業主になるか、迷う方も多いと思います。
そこで、今回は個人事業主として副業を行う場合のメリット・デメリット、個人事業主の確定申告についてご紹介します。
そもそも、なんらかの事業を始める際、「個人事業主として開業」、「法人(株式会社、合同会社など)として開業」といった選択肢があります。
これらは法律上の扱いや税制面での違いがあり、事業規模が小さい場合は個人事業主、事業規模が大きい、もしくは、将来的に大きくする可能性がある場合などは法人として、開業されることが多いです。
そして、個人事業主とはその名の通り“個人で事業を行う人”の事です。
個人事業主の形態を選択する方には、芸術家、写真家、美容師、講師、職人、ブロガーなど、一人でも完結する事業を行う方が多くいます。
個人事業主として開業して、副業をするメリット・デメリットをご紹介します。
社会保険料は『給与所得』で算定されるため、所得の種類が『事業所得』に分類される個人事業主は、いくら稼いでも社会保険料は増えません。
確定申告には、『白色申告』、『青色申告』がありますが、個人事業主の場合、税制面で優遇を受けやすい『青色申告』を利用することが可能です。
青色申告で確定申告すると、無条件で65万円、または10万円の特別控除が受けられます。
※事前に青色申告承認申請書を税務署に提出していないと青色申告は利用できません。
個人事業主として行っている副業が赤字だった場合、本業と損益通算ができます。
損益通算とは、利益(給与など)と損失を相殺することです。
例えば、課税対象所得が500万円あった場合は、500万円分の税金を納めなければいけません。
しかし、課税対象所得が500万円あっても、副業で年間100万円の赤字が出た場合は、課税対象所得500万円 から赤字分100万円を相殺し、課税対象所得が400万円分に減額するということになります。これが損益通算の仕組みです。
所得の種類には様々なものがありますが、個人事業主として開業すると事業所得で申告できる場合があります。
事業所得での申告が可能になると、その他の所得(雑所得など)よりも計上できる必要経費が増える可能性があります。
本業がサラリーマンで雇用保険に加入していても、副業で個人事業主となっている場合、退職しても失業状態とは判断されないため、受給資格がないと判断されることもあります。
個人事業主になるには、事業を始めてから1ヶ月以内に税務署で開業手続きをすることが原則です。
また、青色申告を希望する場合、開業してから2ヶ月以内に必要書類を提出しなければ適応されない可能性があるため、手続きの期日には注意が必要です。
確定申告とは、1月1日~12月31日までの1年間の所得に対して、納付すべき税金額を計算し、期限までに税務署へ申告、納税する手続きのことです。
源泉徴収票にある『給与所得控除後』の欄が空白の場合は、年末調整が行われていないため、確定申告をする必要があります。
出典:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
企業に勤めている人でも、副業などによって20万円超の所得がある場合は、確定申告をしなくてはなりません。
メインでない方の会社で得た所得が20万円を超える場合、確定申告をしなくてはなりません。
納税は国民の義務なので、確定申告が必要な方は必ず行いましょう。
確定申告の必要があるのに面倒くさがってしない人もいますが、場合によっては脱税の罪に問われる等など、厳しいペナルティを受ける可能性があります。
事業などの収入から必要経費を差し引いた金額(所得)が38万円以下の場合、確定申告は必要ありません。
副業などで給与所得・退職所得以外の所得が20万以下の場合、確定申告をする必要はありません。
個人事業主が行う確定申告は、白色申告と青色申告の2種類に分かれています。
青色申告は、帳簿付けを行う代わりに控除を受けられる制度で、事業所得、不動産所得、山林所得のある人が対象となります。
青色申告には簡易簿記と複式簿記という2種類の帳簿の付け方があり、どちらの方法で申告するかによって控除額が変わります。
複式簿記の帳簿付けは煩雑ですが、65万円の控除を受けられるため、最も節税効果を得られます。
簡易簿記は、複式簿記よりも簡単に帳簿付けを行えますが、控除額は10万円となります。
青色申告を希望する場合は、事前に『青色申告承認申請書』を税務署へ提出する必要があります。
⇒前年の3月15日まで
例)2019年3月16日~2020年3月15日に提出した場合、青色申告を行えるのは2021年分となります。
⇒開業届の2ヶ月以内
青色申告の申請をしていない方は、自動的に白色申告の申請を行うことになります。
白色申告は、比較的簡単に書類を作成することができますが、青色申告に比べると控除額が少ない特徴があります。
青色申告と白色申告のメリット・デメリットを見ていきましょう。
最大のメリットは青色申告をするだけで特別控除を受けられる点です。
複式簿記の場合は65万円、簡易簿記の場合は10万円の控除を受けられるため、高い節税効果を得られます。
損益通算しても、まだマイナスが多い場合は確定申告をすることで、最長3年間損失を繰り越せます。
家族に給与を支払う場合、条件を満たしていれば『青色事業専従者給与』として、経費で計上ができます。
経費扱いになると所得を減らして申請できるため、納付する税金も抑えられるのです。
減価償却とは、車やPCといった固定資産購入の費用を『資産』として計上しておき、使用する期間に合わせて、毎年少しずつ費用を計上していく手続きです。
2020年3月31日までに購入した10万円以上30万円未満の資産は『少額減価償却資産』として、購入した年に全額経費計上できます(300万円まで)。
65万円の特別控除を受けるには、複式簿記という非常に煩雑な帳簿付けをしなくてはなりません。
税務に関する知識も求められるので、忙しいサラリーマンが自分で行うには負担の大きな作業です。
青色申告承認申請書には提出期限があるため、期限の過ぎてしまった方は受けられません。
青色申告のような申請手続きがないため、手間が掛かりません。
簡易的な帳簿付けが認められているため、比較的負担の少ない申告方法です。
簡易的な帳簿付けのため、青色申告のような特別控除はありません。
“収入の変動が大きくなる可能性のある所得(原稿料など)”や、“災害などで固定資産に被害があったときの損失”以外は、赤字の繰り越しができません。
青色申告のように経費計上はできません。
白色申告では『事業専従者控除』として給与額に関係なく、一定額までの控除となります。
今回は、個人事業主として副業を行う場合についてご紹介してきました。
個人事業主として副業を行うと税制上の優遇措置を受けられるケースも多いため、節税効果に期待できる働き方です。
継続して事業を続けられる見通しがあるなら、個人事業主として開業した方が社会的信用度も高く、税制面での恩恵も受けられます。
現在の所得状況と事業の見通しを加味し、ご紹介したメリット・デメリットから副業で個人事業主になるか検討されてみてはいかがでしょうか。