会社員ではなく「営業として独立開業したい」と考える方も多いのではないでしょうか。
働き方改革などの影響から、近年フリーランスの営業として独立する人が増えており、営業を外注する企業も増加傾向にあります。
とはいえ、会社の後ろ盾なしで働くのは不安でしょう。
この記事では、営業として独立開業を目指す方が知っておきたい、事前準備や失敗しないためのコツ、起業時に活用できる助成金についてご紹介します。
独立と聞くと、多くの人はエンジニアやクリエイターのように「自分の持つスキルや商品を売ること」と想像するでしょう。
しかし、営業における独立とは「販売元の代わりに商品・サービスを売ること(=営業代行)」です。
そのため、営業職として独立する場合、まずはどの商品・サービスを取り扱うかを決める必要があります。
近年は、
といった悩み・ニーズを持つ企業も多いため、積極的に営業代行を活用している企業が多いです。
「アポ取りのみ」「アポ取り〜商談」「カスタマーサポート」など、多様な仕事があるため、自分に適した案件を見つけられるでしょう。
営業代行として独立した場合の平均年収は、300万円〜400万円程度が一般的です。
求人ボックスによると、正社員の営業職の平均年収が379万円なので、会社員時代と同程度稼いでいる営業フリーランスは一定数いると言えるでしょう。
ただし、会社員と違ってフリーランスに収入の保証はありません。
当然ですが、成果を上げられなければ収入は低くなりますし、成果次第では年収1,000万円超も可能です。
スキルや経験によって年収が大きく変わるため、フリーランスの営業代行として稼ぐには、自分が得意な業務や商品・サービスを選ぶことが大切です。
独立開業後のスムーズな活動には、事前準備が欠かせません。
ここでは、営業として独立開業するための準備についてご紹介します。
営業として独立する場合、他人の持っている商品・サービスを売ることになるため、まずは何の商材を取り扱うかを決める必要があります。
成果は「どんな商材を取り扱うか」によって変わるため、商材の単価やマージン、報酬体系をよく確認しましょう。
顧客との相性や自分が好きになれるかどうかも、重要な選定ポイントです。
また、業務範囲(フォローアップの有無など)やノルマの有無など、販売に関するルールも明確にしておきましょう。
商材を仕入れる場合、在庫リスクを負うことになるので、より一層慎重に選ぶ必要があります。
フリーの営業として独立する場合、仕事用の携帯やPC、プリンターといった備品の購入費用がかかります。
店舗や法人設立と比べると、少ない資金で独立開業できますが、一般的に独立直後は収入が不安定です。
好調なスタートを切れたとしても、何らかの事情で仕事が途切れる可能性もあるため、当面の間生活できるくらいの蓄えはしておきましょう。
また、フリーランスが加入する国民健康保険には、傷病手当の仕組みがありません。
ケガや病気によって働けなくなった際、貯蓄からやりくりすることになるため、6か月分程度の生活費があると安心です。
フリーの営業が仕事を受注するには、クライアントから信頼してもらう必要があります。
クライアントは実績を見て判断しているため、少なくとも3年以上は営業経験を積み、実績を上げましょう。
会社員時代から副業で営業代行を始めておけば、より多くの実績と経験を積めますし、人脈も広げられます。
収入を確保しながら起業準備できるので、営業として独立を考えている方は、副業からのスタートがおすすめです。
営業職に限った話ではありませんが、独立後は自分自身がブランドになります。
実績がない独立当初は、新たな人脈をつくることが難しいため、会社員時代にしっかりと人脈を広げておきましょう。
前職の会社やクライアントと良好な関係を築けていれば、独立後に使ってもらえる可能性がありますし、周囲に評判を広めてくれるかもしれません。
リアルでの関係構築はもちろん、ビジネスマッチングアプリやSNSを活用して、オンライン上の人脈づくりも積極的に行いましょう。
SNSやブログなどを使って、積極的に自分の実績やスキル、仕事に対する姿勢などを発信しましょう。
投稿を見た人があなたに興味を持ち、SNSやブログ経由で仕事を依頼されるかもしれません。
特に、SNSは拡散力があるため、投稿内容を工夫すれば、多くのユーザーに知ってもらうことも可能です。
事業を立ち上げて失敗するケースには、いくつかのパターンがあります。
独立してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、失敗例を参考に独立の準備をしてください。
「この人は顧客になってくれるだろう」という人も、なかなか顧客にはなりません。
会社にいる間にビジネスパートナーや取引先へ独立を伝えると「お客さんになるよ」と言ってくれるかもしれませんが、社交辞令が含まれていることを忘れないようにしましょう。
実際「前職で付き合いのあった人が全然顧客になってくれない」というのはよくあります。
前職の人脈に期待しすぎると、起業直後に見込み客がゼロになる可能性があるため、他で顧客を獲得する計画が必要です。
独立してからの事業計画を見誤ると、運転資金が足りずに失敗するケースがあります。
具体的には、ターゲットや計画が大きすぎるケースです。いくらアイデアがよくても、実現前に資金不足に陥っては元も子もありません。
小規模な売上の積み上げや、日々の運転資金を少しでも補填できる計画が必要です。
また売掛金の回収サイクルが長いと、キャッシュが回らずに黒字倒産する可能性もあります。
売上の数字だけを気にするのではなく、キャッシュをどう回していくか具体的に計画を立てましょう。
スキルや経験が足りないにもかかわらず、勢いで起業すると失敗しやすいです。
スキルや経験が足りないと、
といった理由で仕事がなくなる可能性があります。
「早く起業したい」と、はやる気持ちをこらえ、独立するために必要な知識やスキルを身につけましょう。
身体的な理由だけでなく、精神的な不調によって働けなくなるケースが考えられます。
独立すると、会社員時代には考える必要がなかった、資金繰りや集客についても考えなければなりません。やることも考えることも山ほどある上、休みなくで働かないといけない時期もあるでしょう。
自分を追い込む時期が続くほど、心身ともにストレスがたまります。
しかし、事業主は会社員とは異なり、雇用保険に加入できません。もちろん、病気になったとしても、失業手当や傷病手当金は受け取れません。
働けないと経済的に苦しくなるため、独立する前に、自分が働けない場合の対処法も考えておきましょう。
起業セミナーや起業コンサルティングを実施する会社や起業家が増えていますが、中には悪質なサービスを提供する会社も見受けられます。
例えば、
などです。
このようなケースでは、高額な費用を支払っても身にならない上、お金を取り戻すのも難しいでしょう。
起業前後の大切な時間とお金を無駄にしないためにも、セミナーやコンサルティングを受ける際には、信用できる相手かどうかをじっくり見極めましょう。
フリーの営業が仕事を受注するには、クライアントから信頼してもらう必要があります。
クライアントは実績を見て判断しているため、少なくとも3年以上は営業経験を積み、実績を上げましょう。
会社員時代からフリーランスとして副業で営業代行を始めておけば、より多くの実績と経験を積めますし、人脈も広げられます。
収入を確保しながら起業準備できるので、営業として独立を考えている方は、副業フリーランスからのスタートがおすすめです。
独立はだれでもできますが、安定的に稼げるかどうかは別の話です。では、独立開業で失敗しないためには、どうすれば良いのでしょうか。
事業計画書とは、事業内容やコンセプト、戦略、目標、収益見込みなどを記した書類です。融資を受ける際に必要な書類のため、独立した人すべてが作成するわけではありません。
しかし、事業計画を立てると事業の全体像が明確になるため、実現に向けた具体的なプランを立てられます。
また、目標に対する進捗状況を客観的に把握できるため、改善もしやすいです。
事業の成功率が高まるため、独立する際は事業計画を策定しましょう。
資金繰りは計画的に行いましょう。
というのも、クレジット販売や掛け売りなど、売り上げの入金が1〜2か月後になることがあるからです。
また、借入金の返済のように、経費にならない支出も存在するため、入金までの期間を考慮して資金繰りしないと、黒字倒産が起きる可能性があります。
独立すると、会社員時代と違って「生活費だけを気にしていれば良い」わけではなくなるので、注意しましょう。
資金繰りの管理には、資金繰り表の作成がおすすめです。
12か月分の資金繰り表を作成しておけば、収支が増減する時期をある程度把握できるため、財務状況に応じた対策が取れます。
固定費とは、家賃や人件費といった毎月かかる経費のことです。
固定費は収益に関係なく発生するため、むやみに固定費を増やすと経営を圧迫します。
事務所やホームページがなくても仕事はできますし、一度雇用すると簡単には辞めさせられません。
仕事が軌道に乗ってから少しずつ充実させていけば問題ないので、収入が不安定な独立当初は、できる限り固定費を発生させないようにしましょう。
収益を拡大させるには、トレンドに乗ることも大切です。
しかし、トレンドだからといって手を広げすぎた結果、支出が増大したり、計画的な事業運営が困難になったりすることがあります。
また、潮目が変わったことに気づかず、急激な収益ダウンにつながる可能性もあるため、トレンドを追いすぎないよう注意しましょう。
報酬が収入に直結するフリーランスは、身体が資本です。
就業不能状態に陥らなかったとしても、体調を崩せばパフォーマンスにも悪影響が出ます。
売上減少やサービスの質低下などの望ましくない状況がつづくと、契約打ち切りや更新なしといった事態を招く可能性があります。
安定的な収入を得るためにも、ワークライフバランスを保ち、心身の健康を維持しましょう。
個人・法人いずれにしても、開業するには手続きが必要ですし、開業後は会計業務や確定申告を行わなくてはなりません。
もちろん、すべて自分で行うことも可能ですが、時間を有効活用するためにも、必要に応じてプロを活用しましょう。
税理士などのプロを活用すれば、迅速かつ的確に必要な手続きをしてくれます。
経営や助成金の相談、金融機関との交渉が可能なケースもあるので、プロに依頼すると本来の仕事に集中できます。
起業の際、資金面がネックになることもあるでしょう。ここでは、起業時に活用できる補助金・助成金についてご紹介します。
助成金や補助金は、予告なく変更・終了する可能性があります。利用する際は、必ず関連団体の情報をご参照ください。
創業助成金は、都内で創業を予定または、創業後5年未満の中小企業者等を対象とした助成金です。
対象者 | 下記いずれかに該当し、一定の要件を満たす方
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対象期間 | 交付決定日から6か月以上、2年以下 |
助成額 | 100万円~300万円 |
助成率 | 2/3以内 |
対象経費 | 賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費 |
申請要件を満たすには2か月以上かかります。申請期間を過ぎた提出は認められていませんので、早めに対応しましょう。
また、創業助成金を受けるには、書類審査と面接審査をクリアする必要があります。
参考:東京都産業労働局『創業助成金(東京都中小企業振興公社)』
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等を対象とした補助金です。
販路開拓や、業務効率化の取り組みに要する経費の一部を補助してもらえる制度で、一般型と低感染リスク型ビジネス枠の2種類があります。
対象事業 |
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対象者 |
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補助額 | 50万円~200万円 枠によって異なる |
補助率 | 2/3 |
対象事業 | 対人接触機会の減少と事業継続を両立させるポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等に関する取り組みに資する事業 |
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限度額 | 100万円 |
補助率 | 3/4 |
対象経費 | 機械装置等費、広報費、展示会等出展費(オンラインによる展示会等のみ)、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、専門家謝金、設備処分費、委託費、外注費、感染防止対策費 |
参考:日本商工会議所『小規模事業者持続化補助金』
参考:国商工会連合会『小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>』
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者を対象とした補助金で、ITツール導入に要する経費の一部が補助されます。
通常枠・セキュリティ対策推進枠・デジタル基盤導入枠の3種類があります。
対象事業 |
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補助額 | A類型…30万円~150万円未満 B類型…150万円~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 |
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費 ※要件あり |
対象事業 |
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補助額 | 5万円~100万円 |
補助率 | 1/2以内 |
対象経費 | サービス料(最大2年分) ※独立行政法人情報処理推進機構公表の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されている、いずれかのサービスが対象 |
対象事業 |
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限度額 | ITツール…5万円~350万円 ハードウエア購入費…10万円 or 20万円(上限) |
補助率 | ITツール…3/4 or 2/3以内 ハードウエア購入費…1/2以内 |
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、ハードウェア購入費 ※要件あり |
参考:サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2022』
フリーランスの営業は、自分の裁量で自由に働ける反面、収入は不安定になります。
そのため、いかに独立までに実績を積み、人脈を広げられるかが重要です。くわえて、しばらく収入が途絶えても生活に困らないよう、ある程度の蓄えも欠かせません。
成功率を高めるためにも、事業計画を立てて事業の全体像を見える化させましょう。
独立のリスクを低減させるためにも、副業から独立に向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。
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