2018年に厚生労働省が改訂した「モデル就業規則」など、働き方改革が進められる中、兼業に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、依然として企業の就業規則では、兼業・副業を禁止しているケースが多いのが現状です。
会社員の兼業・副業はこれからどのような方向に進んでいくのでしょうか。
今回は兼業と副業の違いについて、そして会社員の兼業について紹介します。
そもそも、兼業とはどのような働き方なのでしょうか。
兼業の「兼」という字には「あわせもつ、複数のものをそなえる」という意味があります。
このことから兼業とは、「本業以外」に異なった事業を合わせ持った働き方を指します。
兼業のほかに、「副業」という言葉が使われることもあります。
副業も、本業以外になんらか仕事を持っているような働き方を指す場合に使われますが、この二つにはどんな違いがあるのでしょうか。
兼業の「兼」には、事業を兼ねるといった意味がありましたが、副業の「副」には「そえる、つけくわえる」などの意味があります。
このことから、兼業は本業と並列の関係であるのに対して、副業は、あくまでも本業を補完するような関係ということができます。
もうひとつ、兼業と副業の違いとして指摘されるのが「労働契約」の有無です。兼業は労働契約がなく、副業は労働契約があるものとして使い分ける場合もあります。
ちなみに、兼業も副業も法律的な言葉の定義はありません。
冒頭でも書きましたが、兼業について企業が全面的に認めているケースはまだまだ少ないです。
株式会社リクルートキャリアでは、2018年の9月に2,271人を対象とした大規模なwebアンケート「兼業・副業に対する企業の意識調査」を実施しました。
これによると、兼業・副業を容認・推進している企業は全体の28.8%であり、2017年に実施された同アンケートから5.9%UPしたものの、全体の3割程度となったとのことです。
企業が兼業を禁止する理由としてもっとも多かったのが「長時間労働・過重労働を助長するため」で44.8%、次いで「労働時間の管理・把握が困難なため」が37.9%となっています。
やはり企業としては、兼業することによって長時間労働や過重労働になり、従業員の働きぶりに支障が出る可能性をもっとも懸念しているようです。
その他には「情報漏洩のリスクがあるため」という理由もありました。
これは兼業も同業種だった場合に多いですが、自社のノウハウや機密事項が他社に漏れてしまうリスクなどを踏まえたものだと思われます。
一方、企業が兼業を容認する理由です。
もっとも多いものが「特に禁止する理由がないから」で42.5%、次いで「社員の収入源につながるため」というものでした。
その他、「人材育成・本人のスキル向上につながるため」「定着率向上・継続雇用につながるため」という理由もあり、兼業を容認している企業は従業員ファーストで考えることで、良い人材が長く働いてくれると考えているようです。
参考:株式会社リクルートキャリア「兼業・副業に対する企業の意識調査」
兼業をしたいけど「就業規則などで禁止されている」という方もいると思います。
就業規則で兼業が禁止されている場合、それに従うしかないのでしょうか。
まず、法律的な観点で見ると、会社員の兼業を禁止する法律はありません。
憲法の第22条では職業選択の自由について、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択 の自由を有する。」と定められているため、企業は正当な理由なしに従業員の兼業を禁止することはできません。
また、労働基準法(34条)では「勤務時間外(休憩時間)に労働者を不当な理由で拘束することを禁止する」という記載もあります。
つまり、就業規則などで禁止されていたとしても、会社側は正当な理由なく、勤務時間外の行動を制限することはできないため、「勤務時間外であれば兼業を行っても良い」と考えることができます。
兼業を禁止する法律がないとすると、就業規則などで定められた兼業禁止は無視しても良いのでしょうか。
そもそも、就業規則は、業務に従事するうえで必要な賃金や労働時間、福利厚生などをあらかじめ規則としてまとめておくものです。そのため、会社の従業員は、業務に従事している間は就業規則に従う必要があります。
つまり、就業規則の効力は業務に従事している間は有効、それ以外の時間は無効と考えられるため業務時間外なら無視することができると考えられます。
では、業務時間外なら好き勝手に兼業を行ってもよいかというとそうではありません。
企業と従業員の労働契約では、従業員は賃金と引き換えに、従業員は労働力を提供しなければいけません。
しかし、業務時間外に行っている兼業の影響で、適切な労働力を提供できなければ労働契約違反となり、何らかの処罰対象となる可能性もあります。
このことから、業務時間外に兼業を行う場合でも、できる限り会社と話し合い双方納得した状態で行うのが理想的だといえます。
※あくまでも一般論としての解釈です。個別の事案について言及するものではありませんので、あらかじめご了承ください。
現在の仕事に就きながら、その他の仕事も並行して行うわけですから当然収入は増加します。
例えば、本業で給料を5万円アップさせようと思えば、ある程度の時間と努力が必要になりますが、兼業であれば数万円ほどの収入アップは短期間で実現可能です。
兼業を容認している企業も、理由として「社員の収入源につながるため」ということを挙げていましたが、業績が景気に左右されやすい仕事の場合、給与の削減やボーナスカットということもありえますから、本人にとっても企業にとっても兼業の収入はありがたいものとなるでしょう。
「本業に活かせるスキルを身につけたい」など、はっきりとした目的を持って兼業を始めた場合は、自身のスキルアップも目指すことができて一石二鳥です。
こちらも収入の増加と同様、本人と企業双方にとってメリットといえる部分で、企業側もスキルアップした社員に高いパフォーマンスを還元してもらえる可能性が高まります。
本業で収入を得られているため、兼業では自分のやりたいことに特化できます。将来起業を考えている人や転職を考えている人は、そのための準備期間とすることも可能ですね。
また、本業でやりたいことができていないと感じている人にとっては、兼業でやりたいことを思いっきりやることがひとつの自己実現となり、充足感を得られます。
本業以外にも働くわけですから、当然休む時間も少なくなり体調を崩しやすくなることに注意しなくてはいけません。
先述した通り、過重労働によって本業に支障が出ることは、企業側がもっとも懸念していることです。会社と良い関係を保つためにも、兼業をするなら体調管理は一番に気を付けておきたいですね。
同業他社で兼業をするときには、本業で知りえた機密事項や特別なノウハウを絶対に漏らさないように注意しなくてはなりません。
悪質であると判断されれば、解雇事由に発展することもありますし、最悪の場合は損害賠償訴訟などの問題に発展しかねません。
今回は兼業と副業の違い、そして会社員が兼業をすることについてまとめました。
兼業という言葉の意味を考えた場合、副業的な意味合いよりは本業を複数持っているというニュアンスで使う人が多いようです。
また、就業時間外に会社員が兼業を行うことは法律的に問題ないことがわかりました。これから兼業しようと考えている方は、会社の就業規則を確認し、話し合った上で円満にスタートできるようにしましょう。
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