起業の主な形態として、業務委託や代理店、フランチャイズが挙げられますが、いずれも特徴や収入、発生する費用が異なります。
そのため、自分に適した形態で起業するには、それぞれの具体的な違いを把握しておくことが重要です。
この記事では、営業代行(業務委託)・代理店・フランチャイズの特徴、違いについてご紹介します。
契約形態によって事業運営の自由度は大きく変わってくるため、各形態の違いを把握しておきましょう。
営業代行(業務委託)・代理店・フランチャイズの違いは下表の通りです。
契約形態 | 特徴 | 収入 | 費用 |
---|---|---|---|
業務委託契約 | 業務遂行を第三者に委託する契約 | 事業所得or雑所得 | ゼロor少額 |
代理店契約 | メーカーの代わりに営業する契約 | 成約手数料 |
|
フランチャイズ契約 | 加盟店が本部にロイヤリティを支払い、商品を販売する契約 | 売上 |
|
営業代行とは、サービス提供会社の代わりに、営業活動を行うサービスです。ほとんどが業務委託契約のため、成果の達成によって報酬を得られます。
仕事内容は、テレアポやインサイドセールスなど、さまざまです。
では、営業代行の主な仕事内容を見ていきましょう。
テレアポは、電話で見込み客にコンタクトを取り、アポイントを取る仕事です。
新規顧客に営業電話をすることもあれば、既存顧客へ営業電話をすることもあります。
テレアポの場合、商談はサービス提供会社の社員が行うため、成約しなくても責任を問われることはありません。
テレアポは成果報酬で1件につき200円程度、成功報酬でアポイント獲得1件につき1〜3万円程度が相場です。
なお、テレアポの成功報酬は、商談のセッティングだけでは発生しません。企業の営業担当が商談し、成約したら報酬発生となります。
メール営業は、メールを活用して新規顧客獲得を目指す営業活動です。
営業メールの作成や見込み客のリストアップ、メール送信業務を行い、見込み客からコンタクトがあった際に商談をセッティングします。
ちなみに、顧客リストはクライアントが用意することもあります。
メール営業は固定報酬で月1,500円〜1万円程度、成果報酬だと1件あたり数十円が相場です。
見込み客に対して、電話やWeb会議ツールなどを活用した非対面での営業活動です。
主に、商談のセッティングやクライアントへの提案、商談、契約締結業務などを行います。
インサイドセールスの相場は、固定報酬で日当2〜5万円程度、成功報酬だと売り上げの20〜50%です。
商品・サービスを購入した顧客に対するアフターフォローを行う仕事です。
定期的な情報提供、商品・サービスの感想・不明点などをヒアリングし、継続利用してもらえるよう良好な関係を築きます。
既存顧客の営業代行の相場は、固定報酬だと月10万円程度、成果報酬なら1件につき1万円程度です。
この場合の成果報酬は、既存顧客からのリピート発注を指します。
営業代行の報酬形態は、主に3つに分けられます。
固定報酬型は、成果に関係なく定期的に一定の報酬が支払われる仕組みです。
目標数を上回る成果を上げても収入は変わりませんが、仮に成果を上げられなくても定額の報酬を得られるため、安定的に稼げます。
ただし、報酬発生の条件が設けられているケースもあります。
発注企業にとっては、売り上げが高いほどコストを抑えられるため、高単価の商材で用いられることが多いです。
成果報酬型は、アポイント獲得や受注といった成果に対して報酬が支払われる仕組みです。
成果に応じて収入が変動するので安定性には欠けますが、成果を上げた分だけ多く稼げます。
成果報酬型は、売り上げの20〜50%を報酬と設定しているケースが多いです。
複合型は、固定報酬と成果報酬を組み合わせた報酬形態です。
「月額(日額)いくら」の最低報酬が固定で設定されており、成果に応じて報酬が支払われます。
最低限の収入は保証されているため、働く側にとって心理的負担が少ない報酬形態と言えるでしょう。
では、営業代行として起業すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
営業代行として起業した場合のメリットは、成果次第で高収入を得られる点です。
会社員の場合、歩合制やインセンティブが採用されていても、ある程度天井が決まっています。
そのため、どれだけ受注を獲得しても、劇的に収入を上げることは難しいでしょう。
一方、営業代行として起業した場合、一般的には発注企業と業務委託契約を結びます。
業務委託契約は、売った分だけ収入に反映される完全歩合制なので、成果次第では高収入を得られます。
営業代行は、商品・サービス提供企業に代わって営業活動を行うため、すでに販売する商材がそろっている状態です。
商材を開発する手間や費用は必要なく、PCやスマートフォンといった最低限のツールがあれば、すぐにでも営業活動をスタートできます。
コストを最小限に抑えられるため、黒字化しやすいでしょう。
フリーランスの営業代行として起業した場合の収入は、成果によって変わります。
仕事量や達成率によっては、月の収入がゼロに近くなることもあるでしょうし、クライアントの都合で突然契約終了になることもあります。
また、収益が発生しても入金が1〜2か月先になることもあるため、事業運営を継続させるには計画的な資金繰りが欠かせません。
起業する際は、最低でも3~6か月程度収入がなくても、生活できる程度の貯蓄はしておきましょう。
会社員と違い、独立すると会社や上司のフォローを受けられません。
クライアントや商談相手とトラブルが発生しても、自力で解決する必要があるため、注意が必要です。
取引先を失う事態にならないよう、行動や言動に細心の注意を払い、定期的なコミュニケーションで信頼関係を構築しましょう。
代理店とはメーカーやサービス提供企業と契約を結び、商品・サービスを代理で販売する法人もしくは個人です。
保険や電気・ガス、光回線、ウォーターサーバー、広告といったサービスに多く見られます。
代理店はあくまで企業と顧客を仲介する立場にあります。
そのため、商品・サービスの契約は企業と顧客の間で結ばれ、代理店が顧客と直接契約を結ぶことは基本的にありません。
また、代理店の報酬は、代理販売の成立時にサービス提供元から支払われる販売手数料です。
代理店には、いくつかの形態があります。ここでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
販売代理店は、サービス提供元と契約を結び、営業や契約手続き、アフターフォローなどを一貫して行う代理店です。
販売店と似ていますが、販売店は商材を買い取って販売し、販売額との差額によって収益を上げている点が異なります。
また、顧客と直接契約を結ぶ点も、代理店との大きな違いです。
取次店は、商材の取次のみを行う代理店のことです。
販売のみを請け負っているため、販売代理店のような契約手続きやアフターフォローは行いません。
業務負担が軽い代わりに、取次手数料は低く設定されています。
Webサイト上で紹介した商品が売れたときに報酬を得られる「アフィリエイト」に似た形態と言えるでしょう。
ヘアケア用品を販売している美容院など、シナジー効果のある商材をサイドビジネスとして扱うケースも多いです。
特約店は、サービス提供元と特別な契約を結んだ代理店のことです。
契約内容は代理店によって異なりますが、商品の販売権利を独占できるなどの特権が得られます。
他の代理店契約より高めの報酬が設定されており、利益を上げやすいですが、競合の商品は取り扱えません。
また、売り上げに対してもある程度責任を負わされます。
OEMも代理店の1つと見なされています。
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、契約したメーカーの商品を自社ブランドとして販売することです。
商品製造のリソースはないものの、自社ブランドを展開したい場合、OEMの形態を取ることがあります。
得られる収益は大きいですが、製造量や販売といった責任はすべて自社にあるため、慎重に計画する必要があります。
代理店ビジネスでは、代理店が販売した売り上げに応じて、本部から手数料が支払われる仕組みです。
代理店の手数料体系は、
の2種類があります。
手数料は商材や契約内容によって異なりますが、スポット収入は売り上げの40%程度、ストック収入は10%程度が相場です。
代理店への理解が深まったところで、代理店を起業するメリット・デメリットについて見ていきましょう。
代理店は販売商材を開発する必要がありません。
サービス提供元と契約を結べば、自社の商材として販売できるため、すぐにでも営業活動を始められます。
スムーズに事業をスタートできるので、軌道に乗せやすいでしょう。
さらに、代理店はフランチャイズと比べると縛りが少ないため、反響を見ながら取扱商材を調整したり、他のビジネスに移行したりしやすいです。
代理店は商品・サービスの開発費用がかかりません。
また、代理店ビジネスの初期費用は一般的に数万円〜数十万円程度とされています。
もちろん、店舗を構える場合などは高額になるでしょうが、初期費用無料の案件も数多く存在します。
フランチャイズの初期費用が数百万円〜数千万円程度かかることを考えれば、わずかな資金で始められるのは代理店の大きなメリットと言えるでしょう。
基本的に、代理店は完全歩合制です。
くわえて、代理店はFCのように営業対象のエリアが制限されておらず、顧客へのアプローチ方法も自由なので、工夫すれば大幅に収入を増やせるでしょう。
個人代理店の場合、募集企業から敬遠される可能性があります。
というのも、個人代理店は1人で事業運営することになるため、従業員がいる代理店と比べるとどうしても売り上げが低くなりがちだからです。
代理店を募集している企業の中には、個人代理店を対象外としているものもあるので、よく確認してから応募しましょう。
代理店は販売商品を自分で開拓しなくてはなりません。
フランチャイズの場合、世の中のトレンドに合った商品が本部から提供されます。
しかし、自由に取扱商品を選べる代理店は、自分で売れる商品を見極めなくてはならないため、場合によっては売り上げ低下につながることもあります。
フランチャイズとは、フランチャイズ本部と契約を結んだ加盟店が、ロイヤリティ(権利使用料)を支払い、事業を行うビジネスです。
フランチャイズ本部をフランチャイザー、加盟店をフランチャイジーと呼びます。
コンビニやファミリーレストラン、ガソリンスタンドなど、さまざまな業種で採り入れられています。
なお、ロイヤリティは契約時に支払う加盟金とは別に、ロゴや商標、経営ノウハウ、教育・指導を受ける権利として、定期的に支払うものです。
フランチャイズのロイヤリティは「売上歩合方式」「粗利分配方式」「定額方式」の3つに分けられます。
売上歩合方式は、売り上げにロイヤリティ比率を掛け合わせて算出します。
比率は本部によって異なりますが、一般的には数%〜十数%で設定されており、最も多く採用されている方式です。
粗利分配方式は、粗利益(販売価格-原価)にロイヤリティ比率を掛け合わせて算出します。
売り上げが同じ場合、仕入額の多寡によってオーナー側の利益が変わってきます。
定額方式は、一定の金額を毎月支払う方式です。
定額方式の相場は数万円〜十数万円となっており、他の算出方式に比べると低めに設定されています。
支出を把握しやすく、売り上げが増えるほど、オーナー側の利益も増加します。
では、FCで起業するとどのようなメリット・デメリットを得られるのでしょうか。
フランチャイズ本部は、加盟店の売り上げが上がるよう、さまざまなサポートを行っています。
たとえば、集客や採用など、事業運営に必要な業務を代わりに行ってくれるケースが多いので、加盟店は販売に注力できます。
Web広告やポスター、折り込みチラシ、テレビCMなど、大々的な広告施策を施すことも可能なため集客しやすいでしょう。
一方、代理店ビジネスでは、サービス提供元が商品提供以外でサポートすることはほぼありません。
加盟店が支払うロイヤリティには、経営ノウハウや教育といったさまざまな援助を受けられる権利の使用料も含まれています。
業界のビジネス経験がなくても、一から教えてもらえますし、開業後も定期的に本部の指導や教育を受けられます。
問題発生時には、本部に助言や支援を求められるため、安心して運営できるでしょう。
フランチャイズの場合、すでに成功したノウハウをそのまま活用するため、スムーズに事業展開でき、収益予測も立てやすいです。
また、フランチャイズはブランド名を利用できるので、個人店を新規出店するより集客力が高く、銀行からの融資も受けやすい傾向にあります。
そのため、同様のビジネスを一から立ち上げる場合と比較すると、成功率が高いと言えるでしょう。
フランチャイズを始める際は、フランチャイザーに対して加盟金を支払わなくてはなりません。
ロイヤリティは開業後も定期的に支払う必要がありますし、店舗ビジネスを行う場合は、物件の家賃や内装、設備費用、人件費などもかかります。
一般的に、フランチャイズの初期費用は数百万円〜数千万円かかると言われているため、金銭的負担が大きいです。
フランチャイズ契約は契約期間が決まっているため、基本的に中途解約できません。
というのも、フランチャイズビジネスは、加盟店が支払うロイヤリティによって、フランチャイザーは収益を得ています。
そのため、契約期間が残った状態で契約解除されると、フランチャイザーは本来受け取るはずだった収益が受け取れなくなり、損失を被ることになります。
したがって、契約満了前に契約解除する場合、違約金が発生する可能性が高いです。
また、フランチャイズ契約終了または解約後、一定期間同業種のビジネスを禁止する「協業禁止義務」が定められていることが多いです。
ここまで、営業代行(業務委託)・代理店・フランチャイズについてご紹介してきました。さいごに、それぞれの特徴と向いているタイプをご紹介します。
営業代行(業務委託)は、任された業務をこなすことで報酬を受け取れます。
そのため、「とにかく自由に働きたい」「営業力に自信がある」タイプ向きと言えるでしょう。
代理店は、制約が少なく、販売するほど収入が上がっていくため「自分で考えて経営したい」「販売力に自信がある」タイプに向いています。
フランチャイズは、業界の経験がなくても、低リスクで事業を始められます。
したがって、「未経験だけど経営に携わりたい」「本部のサポートを受けたい」タイプにおすすめです。
ご紹介したビジネス形態には、メリット・デメリットが存在します。
それぞれの特徴を把握した上で、どの形態で起業するか慎重に検討しましょう。